こんにちは、このは歯科クリニック院長の小西です。
開業以来、インプラント治療依頼を多く受けておりますが、その反対に他院で行ったインプラント治療のリカバリーを行う症例も多くあります。
今回はインプラント治療を受けて、お困りの方にお役にたてるような情報を発信できればと思います。
この記事の内容は以下の通りです。
- インプラント治療後の多いトラブルとは
- 実際のトラブル症例への対処法
- トラブルを回避するインプラント治療のポイント
- 歯科医師向け
インプラント治療後の多いトラブルとは
インプラント治療は、上手くいけば患者さんは大きな恩恵を受けることは事実であり、有効な治療だと考えています。
しかしその反面、年々インプラント治療のトラブルも増加しているように感じています。
それでは、実際にインプラント治療を受けた後にどのようなトラブルが多いのでしょうか。
1983年に日本で初めてインプラント治療の概念を築いた東京歯科大学インプラント科の調査によると、
トラブル症例65症例(2005. 5~2007. 2 )において、最も多かった(22症例)のがインプラント周囲炎、次いで19症例が上部構造(上部構造とはインプラント の上の被せ物含むパーツのこと)のトラブルでした。
インプラント周囲炎とは
インプラント周囲炎とは、インプラントの周りに炎症が起きる病態で、天然の歯でいう歯周病の状態です。
ただし、天然歯と同様、インプラント周囲炎も細菌による炎症のみではありません。
噛み合わせによる過剰な力や、噛み合わせのアンバランスによって引き起こされるのも多々あります。
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結果的に、歯周病のような状態を呈しているだけで、その原因の診査診断が重要となります。
また、上部構造のトラブルとは、インプラントの根(フィクスチャー)は生着しているものの、フィクスチャーにのせる被せ物を含むパーツのトラブルを意味します。
それでは、当院に来院された実際のトラブル症例をもとに説明します。
実際のトラブル症例への対処法
他院で奥歯にインプラントを数年前に埋入され、最近痛くて噛めないということで来院された患者さんです。
3本のインプラントを使用して4本分のブリッジになっていました。
しかし、3本ともインプラントがインプラント周囲炎に罹患していました。
患者さんは歯科医院でのケア、セルフケアもされていたそうですが、インプラントの周囲の骨、歯茎は化膿しており、インプラントを支える骨が溶かされていた状態でした。
軽度のインプラント周囲炎の場合は歯周組織再生療法で治癒の可能性が見込めますが、
この症例ではすでにインプラントの周囲に骨がほとんどなく、3本ともインプラント撤去という選択を行いました。
※一部画像を加工しております。
インプラント撤去は天然の歯とは違い、患者さんには侵襲が大きい治療が少なくありません。
インプラントは天然歯とは違い、インプラント周囲炎に罹患しても骨と強固にくっついていることが多い実感です。
したがって、インプラント周囲の骨を含んで削り取ることもしばしばです。
そして、インプラントを撤去後、骨に入り込んだ膿を除去します。
※一部画像を加工しております。
この症例の原因はケアの不十分も考えられますが、バランスがとれていない噛み合わせも原因だと考えます。
インプラント周囲炎は細菌のみの原因ではなく、噛み合わせのバランス、インプラントの埋入位置も影響を及ぼします。
したがって、インプラント治療をする前に、噛み合わせをしっかり設計し、バランスをコントロールした上でインプラント治療をすることが最善だと考えています。
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もう1症例ですが、この症例も他院でインプラント治療を行っている患者さんで当院に来院されました。
この患者さんはインプラント治療を受けるも噛めないという主訴でした。
このようにインプラントが斜めになっていること、同部位に何本もインプラントを行っているも、他の欠損部分は手付かずという状態でした。
私は『後医は名医』という考えていますので、前医の治療に言及はいたしません。
それを前提で、もし私がこの症例をインプラント治療する前に手掛ける場合のお話しですが、
私は一箇所にインプラントを集中させず、歯のない部分に均等に、インプラントの傾き(植立方向)を噛み合わせとまっすぐにして埋入します。
インプラント治療は1本あたり当院でも50万円程度(上部構造含む)かかります。
したがって、歯の欠損が多い場合、埋入本数を考慮していかに最小限のインプラントで最大限の効果をだすかが問われます。
インプラント埋入ポジションが、作りたい噛み合わせから著しく外れていなければ、当院では被せ物(上部構造)からやり直す、あるいは義歯に切り替えるという治療を行います。
クリニックによって使用しているインプラントメーカーが異なるため、上部構造を外すためにはそのインプラントメーカー専用のネジが必要です。
当院ではそのような場合に対応できるように各種メーカーに対応できるドライバーキットも用意しています。
しかし、この症例の既存のインプラントに対しては、インプラントの埋入角度によって、被せ物を入れても良好な結果が期待できないため、やはり撤去という提案になってしまいます。
このようにインプラントを複数本治療されている場合、これ以上インプラント治療を受けたくても金額を支払えないということになってしまう患者さんも少なくありません。
トラブルを回避するインプラント治療のポイント
したがって、これからインプラント治療をされる方は、
・インプラントが抜ける可能性があること
・他の歯を失ったときに再度インプラント治療が必要になること
この可能性を踏まえて、インプラント治療をする前の治療の計画が重要です。
それでは、インプラント治療をどのようなクリニックで受ければいいかです。
ベストは患者さんが信頼できる先生だと考えますが、できればインプラント治療のみならず噛み合わせの知識をしっかり身につけている先生がいいと考えています。
なぜなら、インプラント治療後のトラブルの多くは多少なりとも噛み合わせが影響することが考えられるためです。
今回、インプラント治療のトラブルから当院のリカバリー治療についてお話いたしました。
リカバリー治療は状況に応じて様々ですが、最終の治療である撤去は患者さんも極力避けたいはずです。
当院でも既存のインプラントを極力保存した治療方法から試み、上部構造を外さなければならなくなったとしても、そのインプラントを利用した義歯(テレスコープ義歯)への切替も行っています。
まずは、現在のトラブルの原因を診断し、患者さんとご相談して患者さんにとって最善な治療の提案ができればと考えています。
【症例集】歯がボロボロでもインプラントや入れ歯で綺麗になれるBefore、After!治療方法と費用を掲載
歯科医師向け
インプラント周囲炎への対応は最終は撤去です。
細菌のコントロールのみならず、咬合のコントロールは欠かせないと考えています。
そうならないために、インプラント治療を行うために咬合の診査診断を行いそれに基づいた治療計画が重要となります。
加えて、埋入ポジションも重要です。
私は外科主導ではなく、補綴主導のトップダウンの治療計画を行なっております。
そこでは、義歯の知識技術が大変役立ちます。
義歯の知識を活かせば、人工歯排列を想定するため、概ねインプラントポジションは外れません。
加えて、上部構造のデザインの引き出しも増えます。
【院長紹介】症例コンテストで数々の受賞歴を持つ院長の経歴紹介
いくつかの研修会にて、先を見据えた欠損補治療方法の選択からインプラントポジション、全顎治療の計画などについてお話ししておりますのでご参考になれば幸いです。
【症例集】歯がボロボロでもインプラントや入れ歯で綺麗になれるBefore、After!治療方法と費用を掲載
(参考文献)矢島安朝 インプラントの変遷と今後の展開 ―過去, 現在, 未来―日本口腔外科学会雑誌、2009 年 55 巻 2 号 p. 42-53